【ウエディングSTORY】いってきます
祖父に買ってもらったお気に入りのランドセルを背負い登校する朝。
玄関の扉を開け「おはよ~!」と迎えに来てくれる幼馴染。
隣町の高校へ通うため始発電車に乗る毎朝。
母の特製お弁当とカイロを手に、センター試験会場に向かった日。
寝坊しても のんびりとかまえて朝ごはん。
母にせかされながらも 鏡チェックを怠らない大学時代。
真新しいリクルートスーツに身を包み どきまぎしながら向かった就職活動の日々。
いつでも ウチの玄関には「いってらっしゃい」が聞こえていた。
どんな時でも、誰かが声をかける、それが我が家。
「いってきます」の返事が聞こえないと
催促の「いってらっしゃい」が聞こえてくるのも我が家。
一人暮らしをはじめた社会人。
誰もいない部屋に 気づいたら「いってきます」と言っていた。
これから 父とバージンロードを歩くその直前。
母がベールをおろしてくれたその時。
「いってらっしゃい」 いろいろなことがこみあげて
「いってきます」と言えなかった私。
「いってきますは?」とからかうように催促する父に 緊張がとける私。
どんな祝福のことばよりも 我が家らしくて嬉しかったよ。