【ウエディングSTORY】父の目

私は父が泣いているのを見たことがない

感動する映画を見ても
ケガをして救急車で運ばれたときも
おじいちゃんおばあちゃんのお葬式でも…

父は絶対泣かない

今日は姉の結婚式

年を経てだいぶ性格の丸くなった父は泣くのだろうか
ふとそんなことを思いながら今日の日を迎えた

挙式は北海道神宮

快晴とまではいかなかったが、時折太陽が顔を出して
気持ちいい風、心地いい気温
肌の白い姉の白無垢姿はとても綺麗だった
そんな姉の姿を見ても
父はいつもと変わらずで、姉に声をかけることはなかった

ブランシュメゾンでのウェルカムパーティー
早速ビールを飲みながら叔父さんと楽しそうに車の話

父はアルコールが入ってリラックスできたのか、
満面の笑顔で楽しんでいた

パーティーが始まった

料理を「美味しい、美味しい」と言いながら食べ、
相変わらずビールをぐいぐい飲んでいた
パーティも終盤にさしかかり、

シャイな姉は両親への手紙を

プランナーと相談し、ある方法でこっそり

両親へ届けた

お手紙を読んだ母は

涙を軽くハンカチでぬぐった

父は、、、、、

「……うん。」

そう言って少し笑みを浮かべ、ビールに手をかけた
そしてパーティーのエンディング
夜の心地いい風とキャンドルの光が輝く中

テラスで姉から両親へウェイトベアーのプレゼント
ベアーを受け取った父は「ありがとう」と言い、
笑顔で姉を抱きしめた

父は涙を見せることなく、最高の笑顔で結婚式を終えた

退場していく姉の後ろ姿を最後まで見つめていた父の目を見て

口数の少ない父の、言葉に出さない溢れる思いが伝わってきた

私は涙が止まらなかった

La Blanche Maison